変異個体は、野生では中々生き残れない
白然界では、突然変異を起こした個体はなかなか生き残ることができません。メダカのように生まれた場所からほとんど長距離の移動をしない定住型の場合、それぞれの生息地ごとに、その場所で暮らしていくのに有利な遺伝子セットを持っています。こうした遺伝子を偶然持っているものが多く生き残っていき、長い年月をかけて、その場所で生き延びやすい遺伝子をもった集団ができあがったのです。
たとえば、高知県のあるメダカの産地で、高知ならではの昼夜の激しい温度差に適応したメダカが生きているとします。突然変異で、高温だけに強いもの、低温にはめっぽう強いという特徴のメダカが生まれたとしても、周囲の環境に適応することができず、集団の中では生き残れないでしょう。
また、野生の色をしたメダカの集団に、突然オレンジ色のメダカが生まれてきたとしても、外敵から目立ちやすすぎて、大きく成長する前に、外敵に食べられてしまう可能性がとても高くなります。
遺伝子の違いが、ある集団の存亡にかかわることすらあります。たとえば、火山帯のある地域では、数百年に一度の火山活動の際に、硫酸の混じった強い酸性の水が生息地に流れ込んでくることがあります。このときに大半のメダカは死滅して、たまたま丈夫な何匹かが生き残ったとします。何万年かの間に、これを数十回以上もくり返していくと、その産地には、強い酸性の水にさらされても生き残れるメダカばかりになっていくのです。
このように、何億という遺伝子のセットの中で、産地の自然環境に適しない遺伝子が淘汰されて、メダカは場所ごとにある程度決まった遺伝子セットを持つようになっていきます。先に紹介した火山の例のように、白然界では突然変異したものが生き残って子孫を増やすのではなく、何か激しい環境変化が起こった場合に、たまたまそれに対応した遺伝子を持ったものが生き残り、主な集団の道伝子の特徴がだんだんと塗り替えられていくケースが多いと考えられるのです。
他の場所で生まれたメダカを放流すれば、こうした遺伝子の特徴が乱されることにつながってしまうのです。産地ごとのメダカを守ることの大切さが言われるのは、こうした理由によるのです。